ヨーガ・スートラのヨガは『心の活動の停止』を目標にし、練習方法として八支則が書かれています。
その内容を紹介していきます。八支則とはサンスクリット語で「アシュターンガ」といい、を「心のコントロールの実践方法」です。八支則は八つの部門に分かれ階段を上がるよう一段階ごと練習します。最後までやり遂げればヨーガの最終目標『三昧』へ到達できるという仕組みです。
さっそく簡単に説明していきます。
ヤマ/禁戒
社会的規範、他者へしてはいけないこと5つ
社会で生活する上での禁止事項です。この世の中、悩みの80%が人とのかかわり方、人間関係といわれています。そんなつもりで言ったわけじゃないのに怒らせてしまったり、傷つけてしまったり。。。。基本的なルール、マナーをあげられているのがヤマです。年齢にかかわらず日常生活に取り入れることで生きやすくなります。
- アヒンサー/非暴力:乱暴をしない。行動や言動で、肉体的・心理的に人へ暴力を振るわない。できれば思考も穏やかに。
- サティヤ/正直:嘘をつかない。嘘はつかずに、本当の言葉で話す。
- アスティヤ/不盗:人のものを盗まない。物、者、時間、情報、想いなどを意図的にはもちろん無意識にも盗まない。
- ブラフマチャリヤ/禁欲:性的行為をしない。無駄に性的エネルギーを使わない。
- アパリグラハ/不貧:所有しない。必要以上のものを持たない。
今の時代と合わないと感じる方もいるかもしれません。例えば、サティヤの正直、本当のことだからとずけずけ言うのもアヒンサー/暴力になります。暴力にならないように言葉を選ぶ、伝え方を変える、思い切って口にしない。という選択もあります。また、ブラフマチャリヤの禁欲は性的エネルギーの無駄遣いをしなければいいのなら、丁寧に人とお付き合いをしていけばいいのではないでしょうか。
ニヤマ/勧戒
自己規範、自分に対してするべきこと5つ
八支則の2番目のニヤマ。「ヤマの他者にしてはいけないこと」に対し「自分に対してしなくてはいけないこと5つ」。通常、自身から変えていくのが簡単と思われがちなのでなぜニヤマが2番目なのでしょう?実は、瞑想で自分自身を見つめることが大切なので、他者から自分へ=外から内へ向かっていく意味でもあります。
- シャウチャ/清浄:自分を清潔に保つ。自身の身体も環境もきれいにすることで心をきれいに導びいていく。
- サントーシャ/知足:足るを知る。自身がすでに持っていることを知り、満足すること。
- タパス/熱行・修行:実践する。心の内側から火が出るような熱いものを持つ。
- スワディヤーヤ/読誦(どくじゅ):聖典・経典を読む。学ぶことで己を知る。
- イーシュワラプラニダーナ/祈念(きねん):神への信仰。自身にあるゆるぎない自分を信じる。
心の内側をクリアに近づけていくには、ヤマとニヤマはバラバラに行うのではなく、同時期に行うのがいいと思います。
アーサナ/坐法
瞑想をするときの座り方
アーサナとはもとは仏像の『台座』を意味し、瞑想時の足の組み方をいいます。のちに、座るポーズになり現代ではポーズ全てを指すようになりました。
ヨーガ・スートラは瞑想をすることで心をコントロールするためのものです。瞑想をするときに長時間座っていても安定した快適さが必要になってきます。
プラーナーヤーマ/調気法
呼吸法・調気法、呼吸の仕方で心の動きを静める
プラーナーヤーマのプラーナとはエネルギー、『気』『生命』のことです。アーサナで姿勢を整え心を落ち着けた後は呼吸によってプラーナをコントロールし心の動きを整えていきます。
プラティヤハーラ/制感
自分に対する外からの刺激を感じないようにしていく
自身の五感を制御し感じないようにしていきます。音が鳴っていても聞こえていない。肌に触れる感覚もない。香りがあっても感じない。など自分自身に集中して外の刺激を感じなくさせ、心が内を向いている状態になります。
ダーラナー/集中
集中、瞑想の対象を一つ決めそれに向かって集中する 雑念はある
瞑想時はどんなに集中していても気がそがれることがあります。そのたびに、瞑想の対象を思い出して集中する。その繰り返し。瞑想の対象に集中している時間より、気がそれる(雑念がわく)時間のほうが多い状態です。
ディヤーナ/瞑想
瞑想時の集中が途切れなく続く 雑念はわずかながらある
ダーラナーよりも瞑想が深くなっています。瞑想の対象に集中している時間は長く、気がそがれる(雑念がわく)時間はほぼない状態です。
サマーディ/三昧
瞑想時の集中がディーヤーナよりも深い 雑念は全くない
ディーヤーナよりさらに瞑想が深くなり、「私」という感覚を忘れてしまうほど瞑想の対象に集中しています。その時、「私」という自我からも解放され、『瞑想の対象のみがある』状態です。
ヨーガ・スートラのヨーガの定義を実践するための『八支則』、元は修行者のためのものでしたが、現代でも十分通用します。次回は生活に取り入れやすいように解説していきます。